アシュタンガヨガに不可欠な呼吸法の概要
(The Perfect Way to Breath In Ashtanga Yoga)

パッタビジョイス師(以下、グルジ)が構築したアシュタンガヨガ。このヨガ・メソッドの基礎となるヴィンヤサの中核にあるのが、特有の呼吸法です。

グルジはヴィンヤサの重要性を、Vamana Rsiが著した古文書ヨガ・クルンタにある一節に言及し、このように説いていました;ヴィンヤサ無くヨガを行うべからず。

 

ヴィンヤサとポーズを連動させる呼吸法は、血液の循環を適切にし、体内毒素を排出。身体を軽く強くし、また、自動的に体内アライメントを正します。呼吸が均等でスムーズになると神経系統も浄化され、結果として思考が落ち着きます。この時、練習を通じた自己の変容が可能となるのです。

 

呼吸法について十分に理解し練習と統合させるには、それを正しく行う方法を、経験ある先生に師事し学ばねばなりません。これより先の本文は、上記技法自体を教える目的ではなく、そのプロセスと得られる利益について共有するものであると理解のうえ、読み進めて下さい。

 

 

 アシュタンガヨガの呼吸法におけるムーラバンダとウディヤナバンダの役割

アシュタンガヨガで必要とする呼吸法は、特に規則性のない通常の自然呼吸とは大きく違います。ムーラバンダとウディヤナバンダの活用を必要とし、これにより自然呼吸時とは横隔膜の動きが全く異なるからです。

 

この技法について語る際、バンダとは何なのか、少なくともその概念について理解しなければなりません。グルジが執筆したヨガ・マーラには、バンダについてこう記されています;ムーラバンダとは、肛門をおへそに向かって引き上げること。ウディヤナバンダとは、おへそから10cm程下の体幹筋肉を引き込むこと。

 

しかしながら、グルジやその孫のシャラス・ジョイスが、生徒に同様の質問をされた際、“ムーラバンダは肛門を絞り込む、或は締める”、“ウディヤナバンダは下胴部を引き込む”と答えているのを耳にした事があります。規則性なくバンダも活用しない自然呼吸時には、横隔膜は下に向かって動き、下腹部にある臓器の位置を移動させます。これにより、下腹部は突き出た状態になります。この呼吸では、動くのはほぼ下腹部だけで、肋骨の動きは非常に限定的です。

 

反面、アシュタンガヨガでは、息を吸う間に肛門を絞め(ムーラバンダ)、下腹部の筋肉を収縮させる(ウディヤナバンダ)ことにより下腹部臓器の下方向への動きを制御。下腹部臓器が動かないことにより横隔膜の下方運動は遮られ、結果として横方向に拡張します。この横隔膜の横方向への拡張には、肋骨下部の外側への広がりと胸の引き上げが必要となります。この結果、呼吸はとても深くなり、これを完全に行う事で肺の隅々に空気を送り込むことが可能となります。息を吐く間、横隔膜は元の位置へと戻り、真逆のことが起こります。

 

この呼吸法は、自分にとって困難なアサナで行う前に、先ずはシンプルなアサナで練習することが大切です。呼吸法をマスターし実践することは、単に呼吸の効率性を高めるのみでなく、背骨を伸ばし支え、体内アライメントを正し、より軽快に動けるコンディションを築き、上下左右あらゆる身体運動に対する助けとなります。このような意識的な呼吸とバンダの連動は、骨盤底、下腹部の筋肉群、横隔膜、肋間筋を強化し整えます。こういった包括的な呼吸の改善は、日常的な呼吸にも作用するようになります。

 

呼吸の質を理解する

グルジは、アサナの練習時にどのように呼吸するかについて語る時、“音を伴った自由な呼吸”というフレーズを繰り返し用いました。その意味は、喉にある呼吸経路を抑制することなく、息をやさしく肺まで流して呼吸するということです。この呼吸によって時より聞こえるソフトな音は、抑制された喉からというより、胸の奥から生じるものなのです。

 

練習においては、吸う息と吐く息の長さと強さを常に等しく保つよう心がけます。

グルジは常々、“正しい呼吸が出来てはじめて、アサナは正しいものとなる”と説いていました。言い換えると、アサナにおいて自由且つ妨げの無い呼吸が出来ていなければ、そのアサナはマスター出来ていないということです。呼吸の質と思考の質は、互いに影響し合います。呼吸がスムーズで深く、バランスが取れていれば、思考は落ち着き揺るがなくなるのです。

 

正しい呼吸の利点

呼吸法を完璧に行うと、より効率的な酸素の吸入と二酸化炭素の排出が可能になります。

均等でスムーズな呼吸の実践は、神経系統に深く影響し、1日を通じて気分の浮き沈みのバランスを整え、肉体的、精神的、感情的な安定をもたらします。結果として、ヨガを成功に導くためにとても重要な、明瞭で落ち着いた思考でいられるのです。

 

呼吸は肉体、精神、感情の在り方と密接に繋がっており、呼吸法によりこれらを整えることが出来ます。例えば、呼吸は感情の抑揚や興奮、又はストレスによって不規則になります。このような時、意識的に呼吸をコントロールすることで、ストレスレベルや感情の乱れを大幅に改善出来ます。深く均等な呼吸を数回するだけで、感情が顕著に変化します。

 

呼吸はまた、肉体的コンディションとも深く繋がっています。ビンヤサとアサナに準じた呼吸法の実践が、強く健全な呼吸器を築き、身体全体の改善を促し、活力を増やし、精神を研ぎ澄まします。古代の教典にあるように、また実際に経験されているように、呼吸はエネルギー(プラナまたは生命力)の循環と密接に関係しています。プラナは、身体の様々な機能を統率します。プラナが滞りなく循環している時は健康ですが、その循環が制限されると病気になってしまいます。健全な呼吸パターンはプラナが正しく循環し続ける為に重要です。ヨガ・マカランダの中でクリシュナマチャリア師はこう記しています; プラナこそが個人の魂(jīvātman)と至高の存在 (Paramātman)を統合する要素であり、プラナのコントロールを実践することが、この過程において必須である。

 

八支則の四支則目であるプラナヤマは、最初の三支則(ヤマ、二ヤマ、アサナ)を更に高次元の意識ステージへと繋ぎます。アシュタンガヨガのメソッドでは、それら最初の三支則の日々の実践を深く均等な横隔膜呼吸で行うことにより、心身を先ず安定させます。そしてこの呼吸こそが、プラナヤマの基礎となるのです。更に上級な呼吸法は、実践者が堅実な練習を長期に渡り継続し、肉体的、精神的、そして感情的に安定した段階でのみ手解きされるもので、これは十分な経験を積んだ先生から学ぶことが必須です。

 

著書ヨガマーラの中でグルジは、ハタヨガ・プラディピカにある警告について述べています; “ライオンやゾウやトラを飼いならすには時間がかかるように、プラナを己がものにするにも時間がかかる。さもなければ、実践者は壊れてしまうだろう。”

 

先ずは正しく呼吸することに注意を向けて、練習の基礎を固めること。それにより、その先へと通じる道がより簡単に、安全に開けるのです。

​翻訳者:福原健治

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